<アールズエバーラスティングKBCオーガスタゴルフトーナメント 最終日◇31日◇芥屋ゴルフ倶楽部(7,150ヤード・パー72)>

 怒涛の猛チャージでプレーオフ進出、そして5ホールにも及ぶ死闘を制した男の目には熱い涙が浮かんでいた。国内男子ツアー「アールズエバーラスティングKBCオーガスタゴルフトーナメント」の最終日。地元福岡県出身の藤田寛之がトータル12アンダーで並んだウェンチョン・リャン(中国)とのプレーオフを制し、大逆転で今季2勝目を飾った。

初の“地元V”へ猛チャージ!藤田寛之が暫定2位タイに急浮上!
 スタートした時点で藤田の頭に“優勝”の2文字はなかった。3日目を終えた時点で首位を走る金亨成(韓国)とは6打の開きがあり、逆転するのは容易ではない。1番ホールのティグラウンドに立った藤田が考えたのは、今季途中からキャディを務めているピーター・ブルース氏のために「ベスト10に入りたい」。ただそれだけだった。

 しかし、この無心でのプレーが最終日の猛チャージを生み出した。この日の藤田はフロントナインでスコアを2つ伸ばしてハーフターンすると、11番から3連続バーディを奪取。この時点でトータル10アンダーまでスコアを伸ばし、伸び悩む上位陣を尻目にリーダーボードを駆け上がった。

 14番ホールからは「緊張が増してきた」という藤田だが、15番ホールでこの日7つ目のバーディを奪うと、17番パー3ではピン1メートルにつけるスーパーショットを披露。このホールも楽々バーディとして、トータル12アンダーまでスコアを伸ばし、ついに首位タイに浮上した。

 その後、最終18番ホールはパーに終わった藤田だが、最終日だけでスコアを7つ伸ばし首位タイでホールアウト。この時点では上位の選手はまだハーフターンを終えたばかりとあり、藤田自身「なんだかんだで1歩届かないかな…」と考えていたが、後続の選手たちは藤田の12アンダーを上回ることなくホールアウトしていく。結局、最終組でプレーしたリャンだけがトータル12アンダーでホールアウトし、決着は藤田とリャンによる18番ホールを使用したプレーオフに突入した。

 このプレーオフの大部分で主導権を握ったのはリャンだった。ティショットが安定せずにパーをセーブするのがやっとの藤田に対して、リャンは好調なショットを武器に絶えずバーディチャンスを作ってくる。しかし、勝負を決めるバーディパットを最後まで決められなかったリャンがプレーオフ5ホール目でついにボギーを叩くと、藤田はここでも落ち着いてパーセーブ。卓越したショートゲームで“ボギーを叩かない”藤田のゴルフが最後の最後で勝利を手繰り寄せた。

 そして、プレーオフを制した藤田は地元福岡の大ギャラリーから熱い声援を浴びて表彰式に臨んだのが、ここである事件が起きた。テレビ局からのインタビューを受けた藤田が感極まって、大粒の涙を流したのだ。それはこれまで積み上げた16度の勝利で1度も見せたことないものだった。

 「なんででしょうね。自分でもわからないです」。突如としてこみ上げた涙の理由について明言はしなかった藤田。しかし、「福岡ですし、親のことを言われると…」と話すように自分が生まれ育った福岡県での優勝には藤田にしかわからない様々な思いが巡っていたのだろう。実際、藤田の父である寛実氏は現在、体調が芳しくなく、手術も検討している状況だという。敬愛する両親への思いが、初の地元での優勝という状況の中で溢れ出てしまったのかもしれない。

 ちなみに藤田は今回の優勝によって賞金ランク2位に浮上。2012年以来となる賞金王奪還も十分現実味を帯びてきたが、藤田自身は「今は荷が重いですね」と困惑気味。「今は、自分の原点回帰をしています。フェードボールを打てていないし、自分の思うところまで行けてない。まずはそこからですね」と結果よりもまず確固たる自分を取り戻すことを目指していく。

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