ドイツ銀行選手権の優勝争いを眺めながら、どうして彼らはこんなにも土壇場で強いのだろかと不思議に思えるほどだった。

松山は後半失速し57位で終戦、遼は第3戦に進めずシーズン終了
 優勝したクリス・カークは、この大会をフェデックスカップランク17位で迎えていたから、ここで優勝せずとも次戦のBMW選手権進出は確定していた。それゆえ、カークは来週へ進めるかどうかというプレッシャーを感じることなくプレーできていたことになるのだが、今大会で2位になった3人は“来週へのプレッシャー”の真っ只中で優勝にさえ迫りながら、自らの手で来週への扉を開いていった。

 ジェフ・オギルビーはフェデックスカップランク100位で今大会を迎え、2位になったことでランク24位へ浮上した。ビリー・ホーシェルは82位から20位へ、ラッセル・ヘンリーは62位から14位へランクアップし、みなコロラドへの切符を掴み取っていった。そんなふうに土壇場で強さを見せた彼らの歩み、強さの礎を少々探らずにはいられなくなった。

 オギルビーは2006年に全米オープンを制したメジャーチャンプ。2009年には開幕戦のメルセデス選手権を制し、アクセンチュア・マッチプレー選手権も制するなどビッグ大会に強い男としてスポットライトを浴びていた。が、2011年以降は勝利から遠ざかり、成績は下降。今季も成績は「散々だった」が、8月のブリヂストン招待と同週開催のいわゆる「裏試合」、バラクーダ選手権を制して通算8勝目を挙げた。

 だが、「その優勝以外は惨憺たる成績。プレーオフに出られるとは思ってもおらず、僕の心はすでに(来季開幕戦の)フライズコム・オープンに向いていたんだ」と、オギルビーは明かした。

 「だから、先週(バークレイズ)出ていたことは信じられなかった。今週ここに自分がいることも信じられないぐらいだった。今週は初日も2日目もパットが最悪で、とりわけ2日目は2メートル以内をすべて外し、3日目の前半も同じように外し続けた」。

 しかし、3日目の後半からパットが上向き、そのときオギルビーはこう思ったのだそうだ。

「ここから先は、すべてがボーナスだ。ゼロではなく、何かがある。まさにボーナスだ」

 期待すらしていなかったものがもらえるのだから、それがどんなに小さくてもゼロよりは大きい。そう思ったら、プレッシャーと言うよりもわくわくする楽しさを感じ、「このプレーオフのシステムはいいなあ、大好きだなあ」と思えてきたそうだ。最終日に6つもスコアを伸ばせたのは、そうやって楽しみながら挑めたおかげだという。

 リーダーボードの最上段に浮上し、優勝への大きな可能性を感じながら臨んだ72ホール目の18番(パー5)。2オンを狙ったセカンドショットはグリーン奥へこぼれ、そこからの第3打はピンフラッグに当たって1メートル半に止まった。

「すげえ。旗包みショットだ」

 日本メディアからは、そんな声が漏れ聞こえ、勝利の女神はオギルビーに微笑みそうに思えた。けれど、肝心のバーディーパットをカップに沈めることはできなかった。

「得るものもあれば、失うものもある」

 勝利は逃したが、2位になり、そもそも出場できると思ってもいなかったプレーオフの第3戦進出を決めた。そうやってオギルビーが見せた強さは「何だってゼロよりは大きい」と考えた「無欲の強さ」だったのではないか。

 オギルビー自身は忍耐のおかげだと言った。パットがまるで入らなかった2日目と3日目の前半、集中力を切らさず、希望を捨てず、ひたすら耐えて転機を待ったおかげだと彼は言った。

「27ホール待っていたら、そのあと素晴らしいことが起こった。またそうなると思えば、これからも辛い時間に耐えられる」

 ベテラン選手たちは、こうやって経験を積みながら、たくましい精神力を培っていくのだろう。

 今大会で予選落ちした石川遼は残念ながらランク72位で敗退となった。松山英樹は30位へランクダウンしたが、第3戦へ進み、そして最終戦進出を狙っていく。

 だが、そうした結果や数字もさることながら、若い2人には、こうしたベテラン選手たちの気持ちの持ち方や考え方をたくさん知ってほしいと願いながら、この原稿を書いた。真似をする必要はない。けれど、そこから何かを学んだり参考にしたりしてほしい。それが彼らの技術力を発揮するための最高のサポートになるであろうことを、この日、オギルビーらの戦い方を眺めつつ、あらためて確信させられた。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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