BMW選手権最終日の上がり2ホール。勝負に出た松山英樹は強かった。

松山英樹、執念の連続バーディ締め!最終戦への切符つかむ
 17番(パー5)ではフェアウェイバンカーから4番アイアンを握り、池に落とすリスクをかけて2オンを狙っていった。イーグルパットこそ外したが、イージーバーディ獲得。18番は「ボギーを打つような場所にだけは行きたくない。とりあえずグリーンに乗せておこう」と安全策で握った9番アイアンで結果的にはピン60センチに付け、連続バーディ。

 「あんなにいいショットが打てるとは思わなかった」と、頬をほころばせた。

 終盤にさしかかるまで、ショートパットは入ったり外したり。スコアのほうもバーディを奪ってはボギーを叩き、ボギーを喫してはバーディを奪い返す一進一退でフェデックスカップランク30位前後を行ったり来たりしていた。だが「15番が終わったとき(電光掲示板にランクが)30と出た」。

 それを見て松山は「17、18番のどちらかで絶対にバーディを取らなきゃ(最終戦進出は)無理だ」と悟り、だからこそ終盤に勝負に出た。

 大会を20位で終え、フェデックスカップランク28位でツアー選手権への切符を手に入れた。挑んだ勝負に勝てて良かった。報道陣の前では、日頃はあまり笑顔を見せない松山が、さすがにうれしそうな表情を見せた。

 だが、最後にはこんな場面もあった。18番の第2打は「球はいいけど、まだスイングはあんまりできてなかった」と、やや不満げ。「えっ?あれは、いいショットだったでしょう?」と問い返すと、「良かったけど……まあ、いいんですよ、もう(決まったんだから)」と、松山は照れ笑い。ランク30位以内に食い込み、最終戦進出を決めたこと、そこに向かって粘りのゴルフができたことには満足し、喜びながらも、松山は今日の何から何まですべてに満足できていたわけではない。

 「メモリアルで勝ってからはパットもスイングもアプローチもうまくいかなくて、ずっとダメだ、ダメだと思って、自分にダメ出しばっかりしていた」

 だからこそ、せっかく進出を決めた来週の最終戦では「優勝して、もしかしたら10ミリオンもゲット」も、もちろん狙わないことはないけれど、一番目指しているのは「今後につながるプレー」だと松山は言った。

 「納得のできるプレーができれば、たとえ最下位の30位でも、すごくうれしい」

 なるほどね。どの言葉にも頷かされた。ここまで考え、悩み、克服し、最終戦進出も決め、「最下位でも納得できれば」と気持ちの持ち方にまで目を向けている22歳の外国人ルーキーは大したものだ。

 しかし……今季の悩みや苦労を、できることなら来季は軽減したいものだ。今日のような瀬戸際で、あるいはメジャー大会のようなビッグ大会で、プレッシャーと向き合いながらプレーするとき、自分と相棒キャディの進藤大典以外に、もう1人、いやもう1つ、松山の拠り所となるものがあったら、そのほうがきっと気持ちも楽になり、戦いそのものにもっと集中できるはずだから。

 今大会で優勝したビリー・ホーシェルは、今季からマーク・ホートンなる“統計のプロ”を自分のサポートチームの一員に迎え、それが「ビッグヘルプになっている」と何度も強調していた。

 そのホートンは英国人。膨大な統計データを解析し、そこから選手に最適なゲームプランやコースマネジメントを作り出すプロフェッショナルで、ブラント・スネデカーらが助言を求め始めたところ、みるみる効果が表われた。スネデカーの2012年のフェデックスカップ総合優勝もホートンの陰の手助けが大きかったという話は米ゴルフ界では有名だ。

 そして、ホーシェルもホートンの手助けを今年から仰ぎ始め、「みるみる効果」とはいかなかったが、このプレーオフでは先週の第2戦で2位、そして今週の第3戦は優勝。シーズンエンドのここぞという場面になって効果が表われている。

 それを聞いて私は思った。もしもホートンがチーム松山の一員だったら、たとえば今週のように「大会で何位になったらフェデックスランクは何位で……」「あのホールまでをイーブンで回ったとしたら、残る何ホールで勝負をかける場合、どこでどうしたら……」といったことを、すべて事前にシミュレーションし、コースマネジメントから目標の置き方まで細かくアドバイスしてくれたはずだ。

 メモリアル以降、ダメ出しばかりしていたと言った松山のショットやパットは、一体、何がどうなっていたのか。その答えもホートンなら統計的に分析し、割り出し、答えをくれたことだろう。

 今日の18番の第2打だって、松山はスイングに対する満足度は「あんまり……」と口ごもったけれど、ホートンなら統計的結果論として「あれは最高のショットだったんだから、感触より結果を選んで……」とか何とか、手ごたえに対しては頑固で繊細な松山でさえ納得してしまうような助言をしてくれたに違いない。

 いや、私は別にホートンの宣伝屋ではないので、必ずしもホートンではなくても構わないのだが、たとえばホートンのような統計のプロ、あるいは別の誰かをアドバイザーに付けるというのは一考に値するのではないか。ゴルフの調子もショットやパットの感触も、体調も気分も、ただでさえ日々様変わりするものばかりなのだから、崩れにくく変わりにくい拠り所が何か1つ松山に加わったら、きっとそれが「ビッグヘルプ」になっていくのではないか。

 もちろん、今日はそれがなくても立派に戦い切ることができた。勝負に出て勝つことができた。だが、来季以降、もっと安定して勝負に挑めれば、もっと勝率を上げることができれば、それは松山がさらなる勝利へ、メジャー優勝へと近づくための大きな助けにきっとなる。

 まだ最終戦が残っているけれど、いや、今日はまだその最終戦進出を決めたばかりだけれど、そんなうれしい日だからこそ、来季の松山がさらにビッグに成長するためには何があったらいいのだろうかと、私の老婆心は膨らむばかりだ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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