米ツアーの2013−14年シーズンを振り返り、まず思い浮かぶのは「タイガー・ウッズがいなかった」という印象だ。

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 今季のウッズは腰痛など故障続き。マスターズにも全米オープンにも、その姿は無かった。ようやく姿を見せてからも、全英オープンは69位に沈み、世界選手権シリーズのブリヂストン招待は棄権、全米プロは予選落ち。プレーオフ4戦には出場すら叶わず、米ツアーはウッズがいないシーズンエンドとなった。

 表彰式や優勝会見にもウッズの姿は一度も無かった。メジャー優勝から遠ざかること6年目ゆえ、メジャーの表彰式にウッズが立たなかったことは、もはや珍しくは感じられない。だが、昨季はレギュラー大会で年間5勝を挙げながら、今季は1勝も挙げられなかったことは、ウッズの存在感をかつてないほど薄めてしまったと言わざるを得ない。

 たとえ成績は振るわずとも、ウッズがその場にいるだけで、試合会場の雰囲気は様変わりする。ウッズがいれば、米ツアーや大会関係者、警備員の間にはピリピリした緊張感が走り、観衆は「ゴー!タイガー!」と狂喜する。だが、ウッズがいない会場に、張り詰めた空気は無い。経済効果にも大きな違いが出ることは言うまでもない。

 けれど、ウッズの欠場が目立ち、ウッズの活躍がなかったからと言って、今季が面白くないシーズンだったのかと問われたら、その答えは「ノー」だ。なぜなら、そのときそのときを盛り上げたスターは、しっかり存在していたからだ。

 シーズン序盤はジミー・ウォーカーがフライズコム・オープンとソニーオープン、ペブルビーチ・プロアマを制し、一気に3勝を挙げて話題になった。バッバ・ワトソンはノーザントラスト・オープンに続き、2度目のマスターズ制覇を果たし、マーチン・カイマーは“第5のメジャー”プレーヤーズ選手権を制した上で全米オープンを圧勝した。ローリー・マキロイは全英オープン、ブリヂストン招待、全米プロで続けざまの勝利を挙げ、世界ナンバー1に返り咲いた。そして、ビリー・ホーシェルはプレーオフ第2戦で2位、第3戦と最終戦で勝利を飾り、年間王者へ。

 ウッズ不在でも話題は豊富。いや、ウッズ不在だからこそ、新たなる勝者、新たなる王者が生まれていった。

 しかし、だからと言って、ウッズ時代が別の誰かの時代に完全に移行したかと問われたら、その答えも「ノー」だ。この夏のマキロイは確かに圧倒的な強さを見せたが、その圧倒性がシーズンエンドまで続いていたとは言い難い。かつてのウッズは、1つ勝ったら2つ、3つと続けざまに勝つ爆発力を持ち、さらにその強さを年間、あるいは数シーズン、維持継続していたからこそ、ウッズ時代が築かれた。だが、前述した今季の活躍者たちの圧倒性の継続期間は、せいぜい数か月どまりで、いわば刹那的。その期間の短さ、刹那性こそが、いまなおウッズ以外の誰かの時代を確立できない原因だ。

 けれど、新時代の担い手となりうる候補者が何人もいるとわかったのだから、将来性という意味で、今季は大漁旗を掲げていいのだと思う。それに、マスターズで優勝を競い合い、2位になったジョーダン・スピース、メジャー4大会すべてでトップ5(5位、2位、2位、3位)に入ったリッキー・ファウラーなど、勝てずとも大活躍を見せた若者たちもいた。デビュー年に早々に初優勝を飾った松山英樹にも今後の活躍が大いに期待できる。そんな彼らに、さらなる爆発力と継続性が加わったとき、ウッズ時代が彼らの時代に完全推移するはずだ。

 ウッズ不在ながらエキサイティングでもあった米ツアーの今季は、日本の童謡に例えるなら、新時代へ向かって芽が出て膨らんで花が咲く少し手前の年。だが、遠くへ飛ぶための助走、高く飛ぶための沈み込みが、とても上手くなされたシーズンだったと私は思う。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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