小さな体をフルに使ったスイングで300ヤードを飛ばし、PGAツアーでも追っかけファンがつくほど熱狂的な人気を得た田中秀道。しかし、そのダイナミックなスイングの代償は大きかった。

 腰を痛めてボロボロの体となって07年に帰国。イップスに近い症状も発症しそのまま参戦した日本ツアーでも結果を残せず、今は下部ツアーのチャレンジトーナメントで復活の道を探っている。

 43歳。現在はテレビ解説やコメンテーターなどを務めることも増えてきたが、プロゴルファーとしての田中秀道の現在地はいったいどこなのか。厳しい現状の中でも失われていない“熱”とは。田中自身が語った。

今も根強い人気…田中秀道へみんなのコメント
「現状は深刻。でも、根本的な熱は冷めていない」

そうですね…アメリカからズタボロで戻ってきて、07年に日本ツアーに復帰して、ですから帰ってきてもう7年。7年成績が出ていない状態ですね。

今の状況は体が悪くなってアメリカから戻ってきて、そこに同じタイミングで加齢、衰えがきているという感じ。どの選手もたぶん30代に入って40歳にむかって、いい意味でスピードダウンしながら、スイングも少しずつ変えていかなければいけない。それが、僕の場合は体のこともあって一気にガクッと落ちてしまった。

僕はもともとスピードを上げてなんぼというゴルフだったんです。特にフォロースルーの先で打つタイプで、ボールの先でクラブを加速させていた。じゃあ、体が悪くなったらそーっと振ればいいと言うんですけど、それができないんです。僕はスピードを上げることしかできない。それでゴルフを組み立てていたので。でも、今は体がそれについていかない。

40歳過ぎて、体自体はボロボロで50歳、60歳だと理解できているんです。でも、脳は20代、30代でとまっている。昔投げられた150キロがでるわけないのに、今も投げられると思っている感じ。運動会のお父さん状態ですよね。

その自分の脳と体のギャップが一番手ごわいんです。右から大きなフックボールなんてもう打てるわけないのに、脳は違っている。なので、今は脳と体の距離感を詰める作業をしている最中。でも、言葉で言うのは簡単だけど、その作業は相当大変で苦労しているのが現状ですね。

アメリカの最後の方はほとんど予選落ちだし、もうゴルフ場に行きたくないというときもあった。それでもアメリカでは来週急に“ポーン”といくかもという思いで戦っていたけど、日本に帰ってきてからは本当に記憶がない日もあったくらいでした。

イップス的な症状もでて、その中でなまじ戦ってしまったからよけいメンタル的にやられたこともありました。でも、そういうのも自分の中で少しずつ認められるようになった。完治はしないと思うけど、受け皿もできてきたので、前に進んでいると思える状況にはなっている。

青木さんにしてもジャンボさんにしても、皆さんそういう時期があって、そこからチェンジしてもう一回上に行く。僕も苦しいですけど、ある先輩からは「昔の中嶋(常幸)さんの方がもっと大変だった」というのも聞いたり。倉本さんにも「俺もOB9発打ってやめた日がある」という話をうかがったり…僕もそういう状況だったのでなんかたまらなかったですね。

現状は正直かなり深刻な状況ではあります。でも、テーラーメイドのスタッフもそうですし、ファンの方もチャレンジとかローカルとか、「ここによく来てくれたね」って所に来ていただける方もいる。ここ何年かは、もうその方達のためだけになんとかしたいと思っています。

“100”打つんじゃないかというゴルフの中で、それを見てる方も難しい心境なんじゃないかと思うけど、次はなんとかなるんじゃないかと思って来てくださる。今はなんとかそういう人たちと一緒に泣ける時間をつかみたい、というのが一番大きいですね。

確かに苦しいです。でも根本的な熱は冷めていないということは言いたいです。今は若い選手に「小学校の時よく見てました」と言われることも多いけど、自分が心震えるくらいすごい奴がいっぱいいるなとは感じていない。

こいつらに負けてるんじゃない。今は、俺がダメなだけなんだ。抜かれたとは思ってない。と思えているのが、ギリギリの僕の熱。でも、そこを信じて最後まで頑張っていきたいですね。

コメント/田中秀道(たなか・ひでみち)

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