マスターズ直前に背中の手術を受けたタイガー・ウッズの3月以来の米ツアー復帰戦となり、注目を集めたクイッケンローンズ選手権。今年に入ってから大会の冠スポンサーが変わり、聞き慣れない大会名になったが、戦いの舞台は、多くのゴルファーの目に焼き付いているはずの名門コングレッショナルだった。

「クイックン・ローンズ・ナショナル」のリーダーズボード
 「出る以上は優勝を目指す」と公言していたウッズだが、「74―75」と数字の上では惨憺たる結果となって予選落ち。ウッズ自身は「あの手術から3か月で試合に復帰できた。山ほどミスはしたが、いいショットも打てた」と、前向きな言葉を口にしていたが、米メディアは「もはやタイガーは以前のタイガーとは違う。タイガーは変わった」などと厳しい論調が目立った。ウッズの次なる試合出場は全英オープンの予定。かつて制したロイヤルリバプールでのウッズの戦いぶりに世界の厳しい目が向けられそうだ。

 さて、話を今大会に戻そう。今年の出場選手たちの顔ぶれは、大ベテランのビジェイ・シン、アーニー・エルスから若手のホープ、ジョーダン・スピースやジェイソン・デイまで多彩だった。が、ラフが深く、フェアウエイもグリーンもカチカチに干上がったコングレッショナルに誰もが手こずり、とりわけ最終日は上位でスタートした選手たちが、ことごとく崩れた。

 なぜ、彼らは最終日に崩れたのか。その原因の1つは、全英オープンに馳せる想いが先走ったからだろう。今大会からジョンディア・クラシックまでの3試合の上位者(今大会と次週はトップ4。ジョンディアはトップのみ)に全英オープンの出場権が与えられる。まだロイヤルリバプールへの切符を手に入れていない選手たちは、コングレッショナルから必死の戦いを開始している。

 こう書いてしまうと、下位に沈んでいる選手が厳しい戦いを強いられるのは仕方がないと思うかもしれない。だが、今大会に出場した120人の中で、すでに全英出場資格を満たしていたのは、わずか26名。それ以外は全員、今週からの3週間が勝負なのだ。今季の米ツアーではこれまで初優勝者が9名誕生しているが、その1人、韓国のノ・スンヨルは、まだ全英出場権を得ていない。全米オープンで2位に食い込んだエリック・コンプトンも、今度は全英出場に意欲を燃やしている。

 米ツアーで優勝しても、メジャーで2位に入る活躍を見せても、別のメジャーの出場権が得られないというところが世界の厳しさと言えるのだが、プレッシャーを跳ね除けながら狭き門をくぐり抜ける厳しさは、それ以上だ。最終日を上位でスタートしたノやフレデリック・ヤコブソンらが軒並み大崩れした一因は、そこにあった。

 とはいえ、崩れた選手の誰も彼もが「全英、全英」と呟きながら崩れたわけでは、もちろんない。元々、難コースのコングレッショナルは、最終日は一層難しくなっていた。イーブンパーで回れば順位が上がり、下位争いなら2オーバー、3オーバーで回っても順位が上昇したほどだった。

 その中でアンダーパーで回るのは容易ではない。スコアを落としても心を乱さず、集中力を維持し、小さなミスを大きなケガへ広げないことこそが、カギになる。

 このフレーズ、誰の受け売りかと言えば、2週前、全米オープンを圧勝したマーチン・カイマーが言っていた言葉。アンダーパーがたった6人しかいなかったコングレッショナルの最終日は、まさに全米オープンの再現みたいなものだった。

 最終日を5位からスタートしたジャスティン・ローズが1アンダーで回って首位に立ち、ショーン・ステファニーとのプレーオフを制して優勝したことは、昨年の全米オープン覇者が全米オープンで身に付けた戦い方を、まるで全米オープンの舞台のように難しい状態だったこのコングレッショナルに汎用し、それが最強であったことの証。その象徴だったのは、池につかまりながらも5メートルのパットを捻じ込み、ボギーに抑えた72ホール目の戦い方だった。

「僕のゴルフは、このタイプのコース、このタイプの戦いに向いているんだと思う。僕は厳しいテストに挑むのが好きなんだと思う」

 2010年のメモリアル・トーナメントで米ツアー初優勝を挙げるまでは、ずいぶん苦労した。連続予選落ちに打ちひしがれた日々。不調に泣いた日々。勝ちかけて負けたことは一体幾度あっただろう。

 だが、ひとたび勝ってからのこの5年間は毎年確実に勝利を重ね、メジャーチャンプにも輝き、今大会で通算6勝目。

 かつての天才少年は、33歳の今、人生で最強のときを迎えつつある。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>